PGQ’s blog

色々な文章を綴っていきたいと思いました。

カラオセフリⅠ

僕達は今、自然の偉大さに直面している。
オーロラの方向から吹く風はほんのり暖かい。それはきっとこの山が温かい空気を運んできてくれるからだ。
「あ、あれ……?」
ふと、僕は気が付いた。
僕の頬に何か冷たいものが当たったのだ。
手を当ててみる。すると指先が濡れた。どうやら涙だったようだ。

「どうした? なんかあったのか?」
「ううん……。なんでもないよ」
心配そうに声をかけてきたライナに笑顔で応える。そして僕は再び空を見上げた。
そこには星があった。満天の星だ。
そしてその星たちは瞬いていた。まるで最後の祝福をしているかのように。
「テントに戻ろうか、ライナ」
「私はあと少しだけ眺めている」
ライナらしいな。彼女がひとつの事に集中し始めるとどう頑張っても彼女は止められない。中学生のときはもっと大変だった。


「ライナ!移動教室だから早くして!」
「んー……」
「起きなさいってば!!」
「痛っ!?」
彼女は寝ぼけながら飛び起きる。
「もぉ〜……何すんだよ……」
「お前が全然起きないからでしょ?」
「だって眠いんだもん……」
そう、睡眠への異常な執着。今でこそ集中の対象は生産的なものへうつり変わっているが、昔のライナはちょっと面白い。
「ほら、行くぞ」
「…………おんぶして」
「はいはい」
背中に乗る彼女を背負い歩き出す。
「むふぅ〜」
幸せそうな声を出す彼女をみて微笑ましい気持ちになる。
「ありがとね」
突然そんなことを言ってくるライナのことをいつしか好きになっていった。
「ねねね、鶴屋ってさー」
「なに?」
「好きな人いるの?」
「えぇ〜……なんでそんなこと聞くわけ?」
「いいじゃん教えてよー」
「えっとねぇ……秘密!」
「えぇー」
「言わないよー」
あの時はまだお互い幼くて恋なんて幼稚で可愛らしいものだったな。
でも、今は、

 

「素晴らしい景色を見させてもらった。」
「遅いな。かれこれ3時間は見ているぞ。」
「あぁ、そうだな。まあ、まだ時間はあるしゆっくり待つことにしよう。」
「そうだね。」
「それにしても綺麗だな。」
「ああ。こんな美しい景色を見られるとは思わなかった。」
「私達ももうすぐ終わりかな。」
「あんまりつまらない事は言わないでくれよ。」
「ごめん、でもあんなに美しいものを見てしまったら対照的な苦悩も自然と思い出されてしまうよ。」
ああ、なんて底のない不幸。あの時に戻りたい。なぜ僕達が選ばれたのさ、もっと色んな人はいただろうに。
「そろそろ寝よう。」
「ああ。」
2人は小さな寝袋をまとって瞼を閉じた。